豊岡鞄職人とそれぞれの「夢のかばん」を手にした子どもたち
兵庫県鞄工業組合(兵庫県豊岡市 理事長 衣川英生)は、子どもや未来のものづくりの担い手に、ものづくりの魅力をさらに知ってもらうことを目的に、2024年5月に『豊岡鞄とつくる「夢のかばん」プロジェクト2024』を発足しました。発足以降、全国各地でのワークショップやSNSでの発信を通じて、18歳までを対象に「夢のかばん」を募集。合計173名の応募から8名が選ばれ、8名の子どもデザイナーが描いた「夢のかばん」が実際に鞄として完成しましたので、11月29日(金)に贈呈式を開催いたしました。お披露目された「夢のかばん」は、東京・豊岡での展示期間を経て、12月中旬頃にそれぞれの子ども達の元へと届けられる予定です。自らデザインした紛れもなく世界にただ一つだけの「夢のかばん」が自分の元へ届く。子ども達にとってはものづくりの楽しさに触れた忘れられない体験、そしてかけがえのないホリデーギフトとなることを願っています。
製作担当企業から「夢のかばん」を受け取る子ども
また、本プロジェクトの発足から子ども達の元へ「夢のかばん」がお披露目されるまでのあゆみをまとめたプロジェクトムービーも合わせて公開いたします。どうぞ豊岡鞄職人達のものづくりに対する熱量やこだわり、そして子ども達の夢を叶えるために地域一丸となって奮闘する様子をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=x1LVUUzdxFA
■兵庫県鞄工業組合理事長 衣川英生のコメント「国内のかばんの生産量の約80%が豊岡で作られています。1200年を超えるとされる鞄づくりの長い歴史を持ち、日本一の鞄の産地であるにもかかわらず、なかなかこの豊岡という名前が皆さんに知れ渡ってないということで、毎年展示会を開いてまいりました。豊岡鞄は2006年に地域団体の商標として認定されてから、2024年の今年で18年を迎えました。18年という年月を人間の年齢で考えますと、選挙権が与えられ、成人として社
会から認められ、どのように社会と関わっていくかを考え、一歩前に歩みを進める頃でございます。
まさに豊岡鞄も18歳を迎えるにあたり、日本のものづくりを支える一つの団体として、業界並びに社会の発展のために、ますます切磋琢磨しながら邁進していきたいと考えています。そこで今年は、日本全国の皆様はもちろん、小さなお子様にも豊岡というかばんの産地があることを知っていただきたいという思いもあり、「こんなかばんがあったらいいな、こんなかばんを持ちたいな」など、皆さんの夢のかばんを形にするプロジェクトに取り組んできました。そして、豊岡のみではなく、かばん業界であったり、ファッション業界であったり、将来一緒に仕事ができるような環境の中で、みなさんが育っていってくれたら良いなと思っております。親御さんもこれをきっかけにお子さんに「鞄ってこんなに楽しいんだよ。ファッションってこんな楽しいんだよ」ということを教えていただいて、是非とも我々と一緒に将来的に仕事をしていただけたら嬉しく思います。」とプロジェクト発足の思いを語りました。
■兵庫県鞄工業組合 豊岡鞄 シナジープロジェクト委員会委員長/株式会社ナオト代表取締役社長、宮下栄司のコメント「豊岡は、日本一のかばんの産地、そして豊岡鞄は皆様の大事なものを運ぶ、品質の良いカバンを世に出しております。そして我々が大事にしているのは、「どこまでも、かばんであること。」という価値観です。皆様の大事なものを運ぶかばんだからこそ、素材品質にこだわり、地域で切磋琢磨して技術を磨いてきました。
しかし、近年の少子高齢化、後継者問題による人材不足ということが全国のかばん業界でも大きな課題になっております。我々は豊岡鞄を全国区にすることにより、今後も続く産業を目指して行きたいと思っております。今回、夢のかばんプロジェクトは未来あるお子様にも、ものづくりの魅力を知っていただきたいという思いでスタートいたしました。SNSやWEBでの応募、そしてワークショップを通じて全国から173の絵を届けていただき、一つ一つ、審査をし、選ばれたお子様を豊岡の工場見学にお招きさせていただきました。そして、みなさんが描いた絵を形にするために、我々職人たちと打ち合わせしながら、ものづくりのプロセスを体験していただけたと思っております。
今回、普通のかばんを作るのでなく、審査が厳しい豊岡鞄の品質基準で作り、かつ、お子さんの夢を壊さないという強い思いで、本当に何度も何度も繰り返し、妥協することなく、職人は夢のかばんを作ってまいりました。本日でこのプロジェクトはひと段落いたしますが、参加いただいた皆様の笑顔や評判を受けて、今回のプロジェクトは我々だけではなく、全国のものづくり産業においても非常に価値のあるものになったのではないかと信じています。ご参加いただきましたお子様、そしてご家族の皆様、そしてこのプロジェクトに参加いただいた皆様、ありがとうございました。」とプロジェクトへの思いを語りました。
1. きょうりゅうかばん氏名:しゅんさん(7歳)
こだわり:恐竜が大好きだからこんなカバンがほしい
製作企業:株式会社足立
受賞理由:可愛い恐竜の絵とカラフルな配色がいいなと思いました。鞄づくりの打ち合わせでは色々なアイデアを出してくれて、かばんが出来上がるのを楽しみにされていることを感じました。イメージを出来る限り形にして喜んでもらえるように頑張って製作したいと思いました。
デザイン画
完成した「きょうりゅうかばん」
製作企業からのコメント
「製作前の打ち合わせで、かばん全体を恐竜にすることになりました。顔や腕、尻尾など、鞄のあちこちに恐竜の要素をしのばせています。顔はポケットにもなっていて、チャックを開けたときに口に見えるよう、内装を赤にしています。描いてくれていた恐竜の絵をもとに、キーホルダーも作りました。難しい挑戦もありましたが、アイデアマンであるしゅんさんの喜ぶ顔を想像しながら、頑張って作りました。」
2.わたしとパパとママのバッグ氏名:めぐみさん(4歳)
こだわり:表、裏、サイドでもつ人をイメージして描いた。ポケットも違う形にした。
製作企業:株式会社コニー
受賞理由:デザインがとても可愛らしく、作品名に惹かれました。親子3人で持てるように、前後とサイドで色やポケットの形状を変えるという発想は斬新でした。ご期待に沿えるよう、強度なども考えながら長く使ってもらえるように頑張って作ろうと考えました。
デザイン画
完成した「わたしとパパとママのバッグ」
製作企業からのコメント
「家族3人で使う」という可愛らしいコンセプトのもと、見る面によって印象が変わるデザインを形にしました。おもて面のハートは中にウレタンを仕込んで少しふっくらとさせました。両面のポケットは、外してショルダーバッグにもできるように改良しています。1つの鞄を、家族3人でいっしょに使えるように。これからの家族の思い出の中に、この鞄がいることができたら、とても嬉しいです。
3.観覧車のかばん氏名:いちとさん(5歳)
こだわり:以前乗って、楽しかった観覧車を鞄にしたいと思ったそうです。観覧車の丸の部分は全部ポッケです。ポッケにチャックを付けて、下のポッケも落ちないようにしたところがこだわりだそうです。
製作企業:株式会社タイムバックス
受賞理由:絵からメッセージが伝わってきました。「夢」を感じました。楽しそうに絵を描いている様子が目に浮かんできて、作るのも楽しくできそうだな、と思い選びました。想像力豊かな作者さんの絵を、さらに驚きのある仕上がりになるように、精一杯楽しみながら作りたいと思いました。
デザイン画
完成した「観覧車のかばん」
製作企業からのコメント
「ゴンドラを、全部違う色にしたい」という、いちとさんのこだわりに面白さをプラスするために、全部違う素材を使うという提案をしました。そこが1番の難関で、 手のひらに乗るほど小さなパーツを、できる限り正円に近づけるため、 何十個も繰り返し検証しました。硬さや風合いが違う素材それぞれに合わせた縫い方をしています。ぐるぐると回る観覧車をイメージして、ゴンドラは1つ1つ取り外し式、仲良しの妹さんやお友達と遊びながら使ってもらえたら嬉しいです。
4.肩掛けコウノトリ鞄氏名:あづきさん(12歳)
こだわり:豊岡鞄は豊岡の名物なので、そこの有名な名物であるコウノトリを元にして鞄のデザインを考えました。コウノトリは白色に黒色の羽が混ざっていて、目の当たりには赤色が入っているので、鞄の蓋は黒、下側は白、白の部分にピンク寄りの赤色の模様を入れました。肩掛けの紐の部分は土の明るい茶色、中身は木や草など自然の象徴の緑にしました。二つポケットを作り、一つは実用的でファスナーなどがついているもの、もう一つはコウノトリポッケとを作りました。デザインには詳しく書いていないが、コウノトリポケットは目に当たるボタンを黒色に、胴体は白と黒を混ぜ(左側が白で、右斜め下の部分は黒色)、嘴は黒くしました。この肩掛けコウノトリ鞄は実用的さ、そして豊岡の名物、どちらも重視し、使って感じることができる鞄になっています。
製作企業:株式会社ナオト
受賞理由:コウノトリをモチーフにしたデザインに目を惹かれたからです。兵庫県豊岡の魅力を鞄にうまく融合させたデザインと細かなポケット・色合いのイメージしっかり考え込まれた応募作品だと印象をうけました。当社オリジナル品のノウハウを駆使し魅力的な豊岡鞄としてイメージを再現できるように製作にあたりました。
デザイン画
完成した「肩掛けコウノトリ鞄」
製作企業からのコメント
デザインのポイントは、鞄の内側にしのばせた「コウノトリポケット」。羽を広げた形のコウノトリは、ポケットの開閉で表情が変わります。何枚もスケッチを起こして、「コウノトリらしさ」をどう出すか、試行錯誤を繰り返しました。コウノトリの顔のてっぺんの縫い目は、頭の形にきちんと沿ったステッチになるように、納得のいくまでミシンを走らせました。
5.ラブカをだっこ氏名:きょうすけさん(6歳)
こだわり:ぜったいくちからものをだしいれしたい!だいすきならぶかはしんかいにいて、だいすきなのになかなかあえないからくびにかけてだっこしたい!
製作企業:株式会社ハシモト
受賞理由:ラブカの口から物を出し入れするアイデアと、ラブカへの愛情が伝わるコンセプトが面白く、実現したいと思い選びました。鞄づくりの打合せ当日もラブカのキャップとTシャツで来てくれた、ラブカ好きのきょうすけさんに喜んでもらえるよう、しっかりと作りこみました。
デザイン画
完成した「ラブカをだっこ」
製作企業からのコメント
ラブカの鰓や口、ヒレなど、100を超えるパーツを縫い合わせて鞄を作りました。ビー玉のような綺麗な目にしたいというきょうすけさんの要望をもとに、緑に染めたレジンを固めて、オリジナルで作っています。「口からものを出し入れする」という作者のこだわりもしっかりと形にするため、お腹や背中にはファスナーをつけていないのもポイントです。
6.宝箱のリュックサック氏名:りんさん(10歳)
こだわり:特徴は肩にかけるところがくさりみたいになっていて、かっこよくせおうことができることです。
製作企業:マスミ鞄嚢株式会社
受賞理由:宝箱のデザインを見た時、子供のころ、鞄いっぱいにおもちゃなどを詰め込んでお出かけをしていた事を思い出し、とても懐かしい気持ちになりました。鞄が運ぶのはただの荷物ではなく、使う人にとって「たからもの」だという事を忘れずに、これからも鞄作りに励んでいこうと、気持ちを新たにさせてくれる作品でした。
デザイン画
完成した「宝箱のリュックサック」
製作企業からのコメント
作者のりんさんは、夏休みの宿題でも作るほど、宝箱が大好きなのだそう。普段箱型の鞄を作るときには、中に木枠を入れて形を整えることもあるのですが、リュックとして背負うには重くなりがちです。そのため今回は、縫製と生地だけで箱型に仕上げる方法に挑戦しました。宝箱好きのりんさんに喜んでもらえるよう、予定していた2倍以上の製作期間をかけて、形の美しさを追求しました。
7.てのかばん氏名:なおさん(6歳)
こだわり: 手の形をカラフルにしました
製作企業:株式会社モリタ
受賞理由:今までたくさん鞄を作ってきましたが、見たことのないデザインと、せっかく作るならユニークな物を作りたいと思い、この作品を選びました。実際にデザインを書いたお子様やご家族にお会いし、デザインの思いや考えが伝わり、なるべくご希望に添った鞄を製作し喜んでいただけるように頑張ろうと考えました。
デザイン画
完成した「てのかばん」
製作企業からのコメント
野球が大好きで、特に好きなのは阪神タイガースとドジャース。そんな作者のなおさんの好みに合わせて、黒いショルダーベルトに黄色い革でタイガースを、青いチャックでドジャースを、それぞれ表現しています。通常、このような形の鞄にするときには指の部分は閉じてしまうのですが、「お菓子を持ち歩きたい」という要望をもとに、指の先までものが入るつくりになっています。
8.地球にやさしい リバーシブルバッグ氏名:みゆうさん(9歳)
こだわり: 表側は牛乳パックなどからリサイクルされた紙バンドを使います(編んで作る)。この紙バンドは学校の図工で使ったとき、さわり心地がよく、柔らかく、とても軽くて素敵だったので使いたいなと思いました。また、フリルには3Rのロゴがあり、SDGsをみんなで意識する世の中にしたいです。
紙バンドは水に弱いので、雨が降った時にひっくり返すと、ペットボトルやプラスチックからリサイクルされたビニルのバッグになります。私はこのカバンを作って夏にたくさん遊びに行きたいです!
製作企業:株式会社由利
受賞理由:リサイクルの素材を使ったカバンが良いなと思い、弊社で扱う漁網を使ったリサイクル生地を使いたいと思いました。リバーシブルとクラフトバンドの相性は難しいですが上手く取り入れられるよう頑張りたいと思いました。
デザイン画
完成した「地球にやさしい リバーシブルバッグ」
製作企業からのコメント
外側のかごはエコクラフト、トートは漁網再生ナイロンを使った、サステナブルなトートバッグです。みゆうさんとの打ち合わせを経て、リバーシブルから2way仕様に変更。かごとトートを分離させても使えるように作っています。かごの編み目が粗いので、形を維持したまま縫い上げるのがとても大変でした。クラフトテープの強度を保てるよう、斜めに縫い目を入れるなど、表には見えないこだわりが詰まっています。
■『豊岡鞄とつくる「夢のかばん」プロジェクト2024』とは
昨今、少子高齢化が進み、伝統工芸品や地方のものづくり産業の後継者不足が課題にあげられています。鞄づくりにおいては1200年の歴史があるとされ、全国有数の鞄の産地である兵庫県豊岡市もまた、同様の課題を抱えております。このたび、子どもや未来のものづくりの担い手に、ものづくりの魅力を伝え、その楽しさを感じてほしいという思いから本プロジェクトは発足しました。本プロジェクトでは、ワークショップやSNSを通じて、子どもや未来のものづくりの担い手たちの自由な発想で描かれた「夢のかばん」のデザインやアイデアを集め、確かな技術とこだわりでお客様の大切なものを運ぶ品質の高い鞄づくりにどこまでも向き合ってきた豊岡鞄のプロジェクトチームが、そのデザインやアイデアの実現に向けて、素材や製造方法にこだわり尽くし、子どもや未来のものづくりの担い手の夢を叶えるために全力で奔走します。地域を代表する認証ブランド「豊岡鞄」としてどこまでも使い手のことを考えているブランドであること、ものづくりに取り組む真摯さ、高いハードルを実現する技術力の高さ、イメージを形にするやりがい、それらの発信を通して、子どもや未来のものづくりの担い手へ夢を与え、豊岡鞄の”らしさ”を社会に発信すると同時に、ものづくり産業を取り巻く課題にアプローチするプロジェクトを目指してまいりました。
応募のあった全173点の作品ならびに、今回製作する作品として選ばれた子どもたちの作品は、以下のURLからご確認いただけます。
(子どもたちの作品一覧)https://toyooka-kaban.jp/dreambag/
(プロジェクト記録動画)https://www.instagram.com/toyooka_kaban.jp/reels/
■豊岡鞄概要
「鞄の街 豊岡」は、奈良時代から始まる柳細工が起源とされ、江戸時代に柳行李生産の隆盛をむかえ、大正以降はその伝統技術と流通経路を基盤に、新素材への挑戦とミシン縫製技術の導入により鞄の生産地となりました。今日では、トータルファッションの重要アイテムとしての鞄・バッグの産地、「日本製の鞄」を生産する拠点として全国から注目を集めています。 豊岡市で作られた鞄は「豊岡産」「豊岡製」「日本製」などと呼ぶことができます。それら豊岡産の鞄の中でも、兵庫県鞄工業組合が定めた基準を満たす企業によって生産され 、審査に合格した製品を「豊岡鞄」と認定しています。「豊岡鞄」は、2006年11月10日に特許庁に地域団体商標として認定された兵庫県鞄工業組合の登録商標です。
豊岡鞄公式サイト:https://toyooka-kaban.jp/
■兵庫県鞄工業組合概要
代表者:理事長 衣川英生
設立年月:1965年4月
所在地:〒668-0041兵庫県豊岡市大磯町1-79
電話:0796-23-7833
メールアドレス:toyooka@bag.or.jp